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サイバー攻撃は本来、重要な論点のはずだった。政治家が、年金流出問題を政争の具にしている場合ではない。

2015.6.12 05:04更新

【産経抄】
憎むべき敵は 6月12日

 千葉県成田市にある曹洞宗の寺院「長寿院」で、住職を務める篠原鋭一さんは20年前から、自殺志願者の相談に乗ってきた。最近はオレオレ詐欺をめぐる悲劇に心を痛めている、と小紙のネットニュースが伝えていた。

 ▼近畿地方の30代の女性は、夫をかたる犯人に大金を奪われた。現金を工面した親からなじられ、なりすまされた夫は自殺、女性は「後を追います」と電話で何度も繰り返していた。「だまされた家族を責めてしまった」。自殺した被害者の遺族からの告白も悲痛である。言うまでもなく、憎むべきは詐欺犯たちである。

 ▼大量の年金個人情報が流出した日本年金機構のずさんな対応が、また明らかになった。流出の確認後もさらに約1週間、インターネット回線がつながったままだった。泥棒の侵入がわかっていながら、戸締まりを怠っていたわけだ。批判の声が一層高まるのは当然である。

 ▼ただ、忘れてはならないのは、機構はあくまで被害者であり、問題の本質は、誰が何の目的で情報を盗んだのか、ということだ。「犯人」はおそらく、オレオレ詐欺犯とは次元の違う、途方もなく大がかりな組織である。

 ▼米国でも連邦政府の人事管理局が、サイバー攻撃を受けて、職員約400万人分の個人情報が流出した。米メディアは、政府高官や議員の話として、中国が関与をしているとの見方を伝えている。サイバー戦争は、攻撃側が圧倒的に有利だといわれている。宣戦布告のないまま、いつ始まってもおかしくない

 ▼実は日本の官庁や企業を狙った攻撃は、毎日のように起きている。安全保障関連法案のなかでも、サイバー攻撃は本来、重要な論点のはずだった。政治家が、年金流出問題を政争の具にしている場合ではない。


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